京焼・清水焼のある風景 – 03

おもてなしに華を添える お気に入りの一品

アトリエ教室 ラ・メゾン・レーヴ 浅井多美子

気の合う友人を招いての午後のティーパーティー。鮮やかな水色のテーブルクロスがかけられたテーブルの上には、いろいろな種類の京焼・清水焼の食器と手作りのお菓子がならぶ。細やかにコーディネートされた、しかしけっして堅苦しさを感じさせない心地良い時間が流れている。
京都駅の北、週末には家族連れで賑わう梅小路公園近くの住宅地に「ラ・メゾン・レーヴ」はある。フランス語で「夢の家」と名付けられたこの小さなスペースは、浅井多美子の主宰する“京都のおもてなし”と“パリのエスプリ”をコンセプトとしたアトリエ教室だ。ここでは誰もがまるで気の知れた友人同士のように、共に料理やお菓子を作り、花を生け、思わず笑みがこぼれるようなおもてなしを互いに楽しんでいる。



おもてなしの豊かさを伝えたい
浅井はかつて海外アーティシャルフラワーブランドのデザイナーとして大手アパレル企業に勤務していた。「もともとお花が大好きで、それが高じて花をデザインする仕事につきました。会社ではヨーロッパやアジアなどいろんな国で仕事をさせてもらい、その国の生活や文化を肌で体験することができました。そこで気づいたことは、世界中どこでも、花を飾るという時は誰かをもてなす時だということ。それでおもてなしそのものをどう作っていくのかということに興味を持ちました。」

11年間におよぶ勤務の後、浅井はヨーロッパへ渡った。仕事で知り合った知人を通じて、各地で料理や菓子作り、料理や器に関する知識、ヨーロピアンスタイルのもてなしの技術やマナーについて学び、センスを磨いた。
「もちろん日本にもすばらしい“おもてなし”はあります。だけどそれは相手に尽くすという面が強く、自分の喜びのためにするという感覚はあまりありません。私は友人を家に招くのも、そのため料理やお菓子を作ったりテーブルをコーディネートすることも好きだし、それ自体とても豊かなことだと考えています。ラ・メゾン・レーヴでは、そんなおもてなしの豊かさが伝えていければと思っています。」



お気に入りから広がる楽しみ
ラ・メゾン・レーヴには、浅井が買い集めたさまざまな食器のコレクションがある。ヴェネチアで集めたガラスの器、南仏を歩いて見つけたアンティークの器、そして京都の京焼・清水焼――。
「私の食器の買い方はシンプルで、とにかく気に入ったものを買うようにしています。自分が気に入ったものだったら、じゃあ今度友だちを呼ぶときに使って見てもらおうとか、どんなものを載せれば栄えるかとか思えるでしょ。逆を言えば、そんなに好きじゃないけど有名なブランドのお皿だから買うということはないですね。」
「この水色に白い花のモチーフが描いてある清水焼のシリーズも、ひと目で気に入って、一式そろえました。でも実際にこうやって使ってみせると一見清水焼っぽく見えないでしょ。ヨーロッパのテーブルクロスと色を合わせたり、南仏のお菓子カリソンを花びらに見立てて並べてみたり。いろんな工夫で京都の伝統的な清水焼も豊かな印象になるし、楽しみ方も広がります。」


会話に花を添える華やかな器
白菊が描かれた器以外にも、浅井のコレクションの中にはいくつものお気に入りの京焼・清水焼がある。彼女にとってそれらもまたたまたま京焼・清水焼であったにすぎないかもしれないが、あえてその魅力について聞いてみた。
「まず、いろんなテイストのものがありますから、選ぶ楽しさという意味では他の日本の陶磁器にはないものがありますね。伝統的なものの中から現代の感覚でしっくりくるものを探すことはとても楽しいことだし、器に刺激をもらってどんなお料理やお菓子を作ろうかという想像力もふくらみます。
それと、やはり清水焼は華やかな絵付けをされたものがたくさんあります。それは、例えばそこに入れたお菓子を食べ終わった後、お皿だけになってしまっても華やかで、「このお皿かわいいわね」と話に花が咲きます。おもてなしには食べ物もお花も大事ですが、やっぱり楽しい会話にまさるものはないですから。」


浅井 多美子
ラ・メゾン・レーヴ主宰。大学卒業後、大手アパレルに入社。フランスのアーティシャルフラワーブランド、エミリオ・ロバの日本展開に伴い、デザイナーとして11年間従事。退社後、ヨーロッパへ渡り各地の料理やお菓子作りを学ぶ。帰国後、京都にアトリエ教室「ラ・メゾン・レーヴ」を設立。料理、菓子、フラワーアレンジメントなどの教室を通じ、ライフスタイルのトータルコーディネートを身近なものとして提案、広める活動を行っている。

ラ・メゾン・レーヴ
http://asaitamiko.com/
京都市下京区梅小路公園前